「長野に根付くライターのキャリア」 長野 #ライター交流会 レポート
2023年10月27日、有限会社ノオトと株式会社 Huuuuの共同開催となった「長野 #ライター交流会」が「シソーラス株式会社」(長野市鶴賀権堂町)で行われました。 #ライター交流会 は2015年に東京・五反田で始まり、その後全国へ展開。長野での開催は、2017年以来で6年ぶりとなりました。
今回は、県内在住のライターさん&ゲストを中心に、スタッフも合わせて30名ほどで盛り上がった当日の様子をご紹介します。
10月最後の金曜に始まった「長野 #ライター交流会」。
前半はゲストが登場するトークディスカッション、後半は参加者のみなさんが自由に行き来する交流会を行いました。
長野にお住まいの編集者&広報が登壇
今回のテーマは「長野に根付くライターのキャリア」。
一人目のゲストは、東京生まれで、大学卒業後にスキー専門誌『Ski』『POWDER SKI』(実業之日本社)の編集長などの経験を積んだ、尾日向梨沙さん。2015年よりフリーランスとなり、スノーカルチャー誌『Stuben Magazine』を創刊、2020年に長野県飯山市に移住しています。
二人目は、長野県安曇野市生まれの筒木愛美さん。東京でSNSマーケティング支援やWebメディア運用などに携わったのちに、2018年にUターン。企業や自治体の情報発信支援を行う“フリーランス広報”として活動するほか、安曇野市の中学生とつくるフリーペーパー「AZUMO」の制作などにも取り組んでいます。
Iターン、Uターンとそれぞれスタイルは異なるものの、長野を拠点に現在の仕事を楽しんでいるお二人には、9つのキーワードをもとにトークを展開していただきました。
長野にIターン、Uターンしたわけ
まずは、お二人が現在のキャリアに行き着いたきっかけと、長野にやって来た理由について教えていただきました。
小学生の頃から“編集職”に憧れていたという尾日向さん。大学卒業のタイミングで、スキー雑誌の編集部でゲレンデガイドを製作するアルバイトを始めたそう。
「両親の影響で、私も幼い頃からスキーが大好きだったので、『スキー』と『編集』という好きなことが同時にできる! ってすごくうれしかったです。当時、全国に600カ所ほどあったスキー場に、一斉にアンケートを送ってデータ入力をするという地味な作業さえも楽しかったですね(笑)」(尾日向さん)
そこから、複数のスキー雑誌での経験を経て、13年間もスキー専門誌で編集をしてきたという尾日向さん。スキーについて専門的に書けるライターさんは多くなく、自ら執筆も行いかなり鍛えられたといいます。
「全国各地へ取材に行くなかで、スポーツとしてのスキーではなく『暮らしに根付いているスキー』や『雪国での暮らしそのもの』に触れ、自然に囲まれて食べ物をつくるみなさんの生活に、豊かさを感じました。自分も憧れるようになって、長野への移住を決めました」(尾日向さん)
尾日向さんの話を受けて、「自分の好きな分野を極めてきた尾日向さんと私のキャリアは対照的かもしれない」と筒木さんは話し始めます。
「私は、流れのままに自分がやれること、得意なことをやってきて今に至ります。東日本大震災後、ボランティア活動に参加したなかで、Twitterで『学生のボランティア募集を呼びかける』という役割をやっていて、自分の言葉や発信ひとつで情報が拡散されて、それがまた人の心を動かしていくことが、すごく楽しかったんです。そうした経験がきっかけで、Webコンテンツ制作会社に入社しました」(筒木さん)
「長野県民は長野が好き」と筒木さん。本人も故郷が好きという気持ちを持ったまま、東京で働いていたと言います。
「出張や旅行で自然のある土地に行くと、ふと長野を思い出すこともあって(笑)。30歳を前に、あらためて働き方を考えたときに、東京で働き続ける自分を思い描けなくて、長野に帰ってきました」(筒木さん)
長野で感じられる仕事の魅力って何だろう?
現在は、お住まいの長野だけでなく東京の企業からの依頼もあり、それぞれの仕事を日々こなしているというお二人に「長野だからこそ感じた仕事の魅力や発見はありますか?」と聞いてみました。
「長野の場合は、自分の生活圏内にいる人と仕事が進んだり、打ち合わせができたりして、そういうところはすごくやりやすいなと思います」と語るのは、尾日向さん。
今年、野沢温泉のスキークラブが100周年を迎えるということで、記念誌制作に携わったそうです。
「デザインは長野市にあるch.books(チャンネルブックス)さんに、印刷は飯山市の足立印刷さんにお願いしました。印刷のコーディネイトは足立印刷さんが行うのですが、実際の印刷は写真集など高品質印刷に特化した別の印刷会社との協業で製作しました。つまり、外注の外注なんですが、東京だと印刷会社同士の横のつながりがなかったので、そのチームワークは長野ならではで、とてもおもしろいなと感じましたね」(尾日向さん)
また、筒木さんからは「長野県は移住者が多い実感がある」という話が。
「長野は移住先としても人気。様々なバックボーンを持つ移住者が周りにもたくさんいるのですが、それぞれの視点で『長野のここがすごくない?』とか『長野はこういうところが素敵!』と魅力を教えてくれて。私は先祖代々長野なので、多様な価値観が混ざり合いながらものづくりが出来るのは、すごく楽しいなと思いますね」(筒木さん)
長野で存在感を発揮するには?
トークセッションの終盤には、「長野で存在感を発揮するには、どうしたらよいでしょうか?」という大きな質問が、進行役のノオト社員・杉山から飛び出しました。
この問いに対し、「次につながるような、物として残る仕事をやることが大事」と尾日向さんは答えます。
「私は本をずっと作ってきていて、新しい仕事をいただくときはやっぱり『Stuben Magazine』を知っていただいた上で、お話をいただくことがすごく多いですね。あとは、書籍や雑誌のような物でなく、SNSに残すことも大切です。日常的なささいなことも、やらせてもらったお仕事も、積極的にSNSで発信しています」(尾日向さん)
さらには、地域性を生かすことが重要であると続けます。
「ライターや編集という職種は、どこにいても仕事ができるのではないかと思います。でもだからこそ、長野に住んでいるから書けることってあるはずなんですよね。その地域らしさや良さを、どんどん発信していくといいんじゃないかなと」(尾日向さん)
筒木さんも「何かを達成すること」が、存在感の発揮につながると語ります。
「それこそ、『AZUMO』は、プロの大人がクリエイティブを教えることで、中学生ならではの瑞々しい表現ができるんですよっていうことを伝えたくて、赤字覚悟でやっています。基本は、自分たちがやりたいからやっているんですが、旗を立てて何かをやるのはすごく大事ですね」(筒木さん)
AZUMOを作ったことをきっかけに、安曇野市役所から仕事の依頼が来たそう。
「この冊子は、将来クリエイターになりたいっていう子どもたちと作っているのですが、彼らが大人になったときに、自分たちもちゃんと誇れる仕事をし続けていられるように頑張ろうね、って思っているところですね」(筒木さん)
最後は参加者みなさんでの交流タイム
60分間のトークセッションは、あっという間に終わりの時間を迎え、ここからは軽食とドリンクをいただきながらの交流会です!
ライター交流会はお一人さまでの参加者がほとんどのため、みなさん「初めまして〜」の挨拶をきっかけに、日頃のお仕事の広げ方やちょっとした悩み相談まで、ざっくばらんに会話を楽しんでいらっしゃる様子が印象的でした。
この時間が、これからのお仕事や関係性が広がるきっかけになっていたらうれしいです。
ご参加いただいたみなさん、どうもありがとうございました。
(執筆=関あやか/ノオト 編集=杉山大祐/ノオト)